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「まいど〜!」から始まり、「おおきにぃ〜!」で終わる、モモちゃんの忙しい一日が今日も始まった。モモちゃんこと森中モモ。今年34歳独身。独身でいる理由は徐々に理解して頂けるであろう。28歳の時にこの喫茶店をオープンし、当初から変わらずのメンバー、料理長の中野直樹、ウエイターの谷下太一、そしてウエイトレスの前川真美の四人で何の問題も無く普通に営業している。東京都内の若干オフィス街にあるこの喫茶店で、店長であるモモちゃんの関西弁は、多少、違和感はあるが、「そこがいい」と言って集まる客が多い。
一階が書店になっており、二階がモモちゃんの喫茶店“モモ姫”になっている。気持ちは分かるが妙な名前だ。書店の横にあるコンクリートの狭い階段を上がると黄緑色のカラーフィルムの貼られた色彩感覚に欠けるガラスの扉がある。そこを押し開けると
「まいど〜!いらっしゃ〜い!」の大きく明るいモモちゃんの声に迎えられる。今日は月曜日なので“カツカレーランチ”の日なのだ。今日も昼食のランチの時間になり、次第に混み合ってくる店内。朝から居座るコーヒー一杯の常連客達は、店内を見渡しながら自分の帰る機会を探っている動作をし、営業に協力的な姿勢を見せている。
「モモちゃんはいつも元気がいいね」と、ランチ常連客の長瀬が言うと
「ウチは深夜が一番元気やねん」とモモちゃんは言い返す。
「今以上、元気なの?」と、当惑した顔の長瀬に対し、唇の右の口角をキュッっと上げて黙って微笑む。この笑顔に殆どの人は話が先に進めなくなる。その事を知っているモモちゃんは、意図的に乱用している。
「ランチね」と長瀬は言う。モモちゃんに特別な感情があるわけでは無いが、テンポのいい軽快なモモちゃんとの会話は彼にとって一番の昼休みの楽しみなのだ。そのオーダーを受け、モモちゃんは
「はーい!味噌カツいっちょー!」と叫んだ。
「え?カツカレーじゃないの?」と慌てる長瀬に
「なんでも、ええねん!」と笑いながら言い切るモモちゃん。不思議な会話だ。果たして長瀬の元に届くメニューは何なのだろうか。ただ、長瀬は今、無性に味噌カツが食べたいと思いはじめてしまった事は事実だ。
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